暗号通貨のリスクと対策①〈取引所リスク・秘密鍵紛失リスク〉

仮想通貨用語解説

暗号通貨には、それ特有のリスクが潜んでいる場合があります。FXなど、さまざまな投資を経験された投資家でも、うっかりすると盲点にはまってしまうかもしれません。

これには、FXや株式投資などにはない、最新の技術が暗号通貨に用いられていることが関係しています。例えば、秘密鍵の紛失など、今までにないリスクが生じる可能性があることから、対策が必要です。

それでは、暗号通貨への投資を始める心構えとして、どのような点に注意すればよいのでしょうか?ここでは、暗号通貨特有のリスクといえる「取引所リスク」「秘密鍵紛失リスク」と、その対策について確認しておきます。

取引所リスク

暗号通貨の取引所は、ただ「取引をするだけの場所」ではありません。自らの大切な資産を預ける場所でもあります。

ちなみに、マウント・ゴックス事件を一つのきっかけとして「取引所選びにはリスクがある」「慎重に選ぶ必要がある」という認識が広がりました。

しかし、実際のところ、なぜ取引所に資産を預けることがリスクなのでしょうか?そしてまた、それは暗号通貨に限ったことなのでしょうか?

FXや株式投資と比較して考えてみましょう。

FXの場合、信託銀行により資産が守られる

FXを行なうためには、FX会社に入金する必要があります。するどい方は、「これはリスクなのでは?」と感じるかもしれません。

しかし、FXの場合は、国の法律により「顧客の資産は信託銀行へ預けること」と定められています。つまり、FX会社に入金したとしても、管理しているのは信託銀行なのです。

したがって、信託銀行へ預けるリスクは生じますが、銀行は信頼性が高いため、まず問題ないと考えてよいでしょう。

株式投資の場合、証券保管振替機構により資産が守られる

FXが問題ないなら、株式投資はどうでしょうか?証券会社や取引所が倒産した場合、保有している株式はどうなってしまうのでしょうか?

FXでは信託銀行が保管していましたが、株式では「証券保管振替機構」と呼ばれる機関が管理しています。

したがって、仮に証券会社や取引所がなくなったとしても、顧客の資産は守られているのです。

暗号通貨の場合は、自己責任が求められる

それでは、暗号通貨はどうでしょうか?実は、暗号通貨には、FXや株式投資のような顧客資産を保護する仕組みが、まだ完全には出来上がっていません。

ビットフライヤーやコインチェックなど、各取引所が自主的に顧客資産を保全する対策(保険)を進めていますが、暗号通貨業界全体として見ると、その動きはまだまだ限定的です。

まさに、このような状態が、「暗号通貨は取引所リスクがある」といわれる理由です。それでは、資産を保全するためには、どのような対策を取ればよいのでしょうか?

なるべく多くの取引所を利用する(分散利用)

暗号通貨の運用においては、一般的には、コインの値動きばかりに気を取られがちです。しかし、確実に資産を増やしていくためには、「取引所の分散」など、リスク管理にも気を配っていくことが必要です。

1つの取引所にすべての資産を預けてしまうより、複数の取引所に少しずつ資産を預けるほうが、取引所の倒産などを想定すると賢い選択であることは間違いありません。

(預けている取引所すべてにおいて、資産が引き出せなくなる可能性は低いです。)

とはいえ、このような取引所の分散を完璧に実践できている投資家は、現状、非常に少ないでしょう。もちろん、10万円以下など、「少額」での投資の場合は、複数の取引所を利用する手間と天秤にかけて考えても良いと思いますが。

 

秘密鍵を紛失してしまうリスク

ビットコインなどの暗号通貨を取り扱うには、秘密鍵の管理が欠かせません。ただ、取り扱いに慣れていくにしたがって、その管理の重要性を忘れがちです。

この、最も基本的なリスク管理を徹底することを忘れないようにしましょう。

秘密鍵の管理方法(自分なりの管理方法)を考えておくことで、紛失する可能性が極めて低くなり、安心して投資することができます。

近年のウォレットには大抵、パスワードを紛失しても大丈夫なように「復元用のパスフレーズ」が設定されています。

「オフライン環境下の端末(パソコン・スマートフォン)が故障した場合、暗号通貨は復元できるのか?」と心配される方もいますが、基本的には復元用のパスフレーズがしっかり管理されていれば問題ありません。

また、取引所に保管する暗号通貨についても、パスワードを紛失しても基本的には再発行が可能なので心配には及びません。

しかし、このことが逆に、「よほどのことがない限りコインを紛失することはないだろう」という油断につながらないようにしましょう。

パスフレーズも「分散」して保管する

これまで解説してきたように、管理主体が第三者にあるウェブ上のウォレットは、多額の資産の長期保管には適していません。

このような場合、ウェブ上のウォレットではなく「端末上のウォレット」かつ、オフライン環境下のウォレットに保管することが最適です。

しかしその場合、復元用のパスフレーズを含めて文字列を完全に紛失すると、もう二度とその暗号通貨を使用することができなくなります。

ですので、これらのパスワードを紛失しないために「1つの場所のみにパスワードを保管しない」ことをおすすめします。

例えば、ある1つの端末上にパスワードを集中して保管していた場合、その端末が故障してしまうとお終いです。

比較的、利用頻度が高い暗号通貨についてはウェブ上のウォレット、長期保管についてはオフライン環境下のウォレットに加え、ペーパウォレットの併用などの工夫が有効でしょう。

これらのリスク管理をしっかり行っていくことで、精神衛生上も安心して暗号通貨を取り扱うことができます。

もちろん、投資手法(テクニック)も大切ですが、このようなリスク管理も非常に重要です!