こんにちは、阿部です。
Tether Limitedの「USDT」が約2億5千万ドル分(約275億円)新たに発行されたことが、2018年5月18日わかりました。
この仮想通貨は、1USDT=1ドルに交換できることを発行企業であるTether Limitedが保証することで価値を保っていますが、これを保証する能力がTether Limitedに本当にあるのか(つまり経済的な余力があるのか)が一部で疑問視されています。
これは投資家にとっても重要な問題です。
もし疑問視されていることが万が一にも正しかったなら、投資家は利益確定時の保管通貨としてUSDTを使うべきではないかもしれないからです。
今回はこの問題について考えてみましょう!
新規発行するも、疑われるTether(USDT)
USDTは仮想通貨の1つの種類ですが、価格変動の大きな通常の仮想通貨とは異なり、1USDT=1ドルへ交換可能であることを発行企業であるTether Limitedが保証しているのが特徴です。
その性質はUSDTという名称からもわかりますよね(USD=米ドル)。
価格変動がドルと同じになることから、利益確定の際や、相場大荒れのときの資金の避難先として重宝されています。
USDTは2018年5月18日、新たに約2億5千万ドル(約275億円)分が発行されたことがわかりました。
これにより時価総額の合計は、25億ドル(約2800億円)を越えています。
つまりTether Limitedは、すべてのUSDTを米ドルに替えられるよう、25億の米ドルを所有している必要があります。
しかし本当にそんな大金を保有しているのか?この部分が疑われているのですね。
USDT発行直後にビットコインが不自然に上昇
なぜUSDTの信用力が疑われているのでしょうか?USDTが新規発行された直後に
ビットコイン価格が上昇していることが、その理由の1つです。
2017年のビットコイン高騰の約50%が、USDTの新規発行直後であることがわかっています。
つまりTether Limitedは実際にはドルを保有していないにもかかわらず、USDTを不正に発行し、それをもとにビットコインを購入しているのではないか?というシナリオが描けるのです。
それが本当だとすると、Tether Limitedは「何もないところからドルに等しい価値を持つUSDTを生み出している」ことになります。
これには証拠はなく、「ちょっと怪しいかも」というレベルから脱してはいませんが、このような指摘は根強くなされています。
USDTを指標としたビットコイン買いもアリ?
記事の内容からは脱線しますが、「USDTが発行されたタイミングでビットコイン買い」というトレードアイデアも相場によっては成り立つでしょう。
実際にUSDT発行の直後に、Tether Limitedによってビットコイン買いが行われているかは不明です。
しかし市場によってそう判断されている以上、一定の共通認識があるため上昇しやすい状態ではあります。
USDTの新規発行のみをシグナルとするのはリスクが大きいかもしれませんが、皆さんが信じている指標と組み合わせてみるとよいアイデアになるかもしれませんね。
これまでどおりUSDTを使うべきか?
上述のように、Tether Limitedは275億円分のUSDTを新たに発行しました。
この状況の中、これまでどおり、USDTを利益確定や資金の避難先として利用しても大丈夫でしょうか?
まず大前提として、Tether Limitedは(大企業とはいえ)あくまで中央集権的な存在なので、「全財産をUSDTにする」といった状況は避けるべきです。
これはUSDTに疑わしきところがあるかどうかに限らず、ということです。
一方、リスクを分散できているのであれば、USDTを過剰に避ける必要もないでしょう。
なぜなら、USDTは使いようによっては便利な存在だからです。
しかも、USDTに代わりとなりそうな安定通貨は、まだ存在しません。
最近、USDTと似た通貨を「Circle」が発表しましたが、USDT以上にまだまだ未知数の段階です。
ですが、こういった代替通貨が誕生し、今後、安定通貨の選択肢がさらに広がっていくとよいですね。